平成27年度 第77回全国都市問題会議 報告書


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平成27年10月8日・9日 長野市
「都市の魅力づくりと交流・定住」人口減少社会に立ち向かう連携の地域活性化戦略

第77回と回を重ねてきた「全国都市問題会議」は、常にその時代に求められるテーマで開催されている。今回のテーマである「都市の魅力づくりと交流・定住」は政府の進める「地方創生総合戦略」に繋がるものとして興味深いものである。
現在、我が国全体で少子化対策をはじめ人口減少に対応した様々な取り組みを進めているが、このことは2年前に「人口の減少数が日本一」と大変不名誉なレッテルが貼られてしまった本市にとって、大きな課題であると同時に何らかの対策を打たなければならない問題となっている。
折りしも本市では本年4月より「観光立市推進条例」が施行され、政府の「地方創生総合戦略」に基づく「まち・ひと・しごと創生総合戦略検討特別委員会」が議会に設置されたところである。
今回のメインテーマは、人口減少を見据え、都市のコンパクト化や近隣自治体の一体となった取り組みの推進等により、持続可能な地域社会をつくることである。そのような中で、交流・定住の促進や新たな連携の取り組みに大きな期待が寄せられるところであるが、全体の人口が減少する中、奪い合いには限界がある。そこで、観光客や市外居住者など交流人口を拡大させることで、人口減少の影響を緩和し、地域を活性化させようという動きが広がっている。
これまで自治体は、ほぼ唯一の存在として地域の公共サービスを担ってきたが、近年は自治体と住民・事業者・NPO・大学・研究機関等が連携・協働して取り組むことが多い。こうした変化とともに、人口減少や財政状況の悪化等によって、自治体間の連携が必要とされている。
また、「都市の魅力づくり」においても、都市の多様性を念頭に、地理的条件や人口・産業の構成・市場性など、都市の持つ特性・個性を活かした方策を検討する必要があるだろう。
魅力ある都市とは、何か。それは、「住み続けたい」「また訪れたい」「住んでみたい」と思わせる町である。このような「まちづくり」を目指していく中で、自治体間の連携という水平的連携のほか、都道府県との垂直的連携によって新たな行政サービスがより求められることになる。
さらに、都市の魅力づくりの担い手は、行政だけでなく産学官金労言の連携が必須であり、とりわけ、住民・町内会、自治会のほか、商工会議所、農協等の関係団体が自治体と連携して魅力づくりを担っていくことが重要である。

魅力を高める要素と地域の活性化について

⑴観光資源・文化
名所・景勝地・文化財等の「観光資源」は観光の重要な柱であるだけでなく、地域住民が地域に対する「誇り」を持つ要素ともなり得る。また、イベントや地域の祭りも交流人口の拡大や住民の地域への愛着に大きな役割を果たしている。
また、従来の観光ではない、新しい観光(ニューツーリズム)の動きが活発化している。特に体験型・滞在型の観光に注目が集まっており、農林漁業の作業体験、地域住民との交流体験などを開発・提供する自治体は少なくない。現在、本市の長井地区で行われている「修学旅行生を対象にした宿泊体験」がそのものであるといえる。このようなコンテンツを今後に向けて開発をすべきであろう。

⑵スポーツ及びイベント
各地で行われているマラソン・トライアスロン等の参加型スポーツイベントは、単に一度に大勢の集客が見込めるだけでなく、住民によるエイドの提供等を通じて、住民と参加者との交流の場になる。トライアスロンを例に挙げると、「宮古島」で恒例で開催されている大会が成功例であろう。
また、数年前に本市の西地区で開催したトライアスロン大会では、三浦縦貫道を一時、車両の通行を止め、コースとしたことや、ゴールをソレイユの丘とした際、コース上の長井地区の住民がエイドや応援を行ったことなど、記憶に新しいところである。
本市では、これまでもカレーフェスティバルをはじめとする集客イベントがあるが、本年、ワイ・ハートで開催する自転車競技大会である「メリダ・ミヤタカップ」の定期開催や日本のマーチングバンド発祥の地である本市の特性を活かした企画など、今後の更なる研究課題であると考える。

⑶公共交通
「住民の足」としての地域内の公共交通機関は都市の魅力を高める重要な要素である。京急・JRなどの鉄道のほか、半島全域を網羅するバス網を擁するなど、地方に比べて本市は恵まれているといえるだろう。しかし、高齢化社会の進展等を考えると、さらにきめ細かな移動手段の確保も考えなければならない。
きめの細かな公共交通は、高齢者にとって外出を促し、健康の増進と地域経済活性化への一助でもある。そのための補助交通機関ともなるコミュニティバスの運営・運行という取り組みも必要となろう。ここでも、事業者・住民が連携することが重要となる。

⑷医療・福祉・子育て
中高年世代が移住する上での不安・懸念として、「医療・福祉」の割合が高いことが、調査の結果として現れている。現在、地域包括ケアシステムの構築が進んでいる中、将来の介護需要の増加への対応が求められることになるだろう。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中では、日本版CCRCの創設がいわれており、本市の地理的、気候風土の環境から、最適と考える。また、介護に携わる方々の雇用機会の拡大に繋がることからも、より研究すべき課題である。
さらに、出産・子育て支援策も都市の魅力の向上に資すると考える。本市では、小児医療費の年齢制限の拡大を進めたところであるが、さらに所得の制限の廃止の検討や待機児童対策の拡充も都市の魅力作りに欠かすことができないものである。

⑸産業
今後、定住を進め、移住を検討する上でも、「しごと」の有無は大きな鍵である。それは単に雇用の場の確保にとどまらず、先進的・創造的な産業や地域に根ざした産業の担い手となる人材・企業の育成・集積も重要だ。
本市では、横須賀製鉄所の創設以来、150年の歴史の中で醸成された技術を持つ産業があり、培われた技術を新たな産業へ活かしていくことが求められている。
そうした時代のニーズを捉えていく意味でも、住民や事業者・大学・研究機関等と連携し、職場をつくる・マッチングを図ることが重要であり、自治体の橋渡しが求められるところではないだろうか。