令和7年度 第31回 日本ヘリコバクター学会学術集会 視察報告
7月11日(金)〜12日(土)
兵庫県淡路市 淡路夢舞台国際会議場
テーマ:ヘリコバクター感染症 未来への架け橋
学術集会は感染症であるヘリコバクターピロリ菌の研究、診療、臨床、検診等に携わる医療関係者を中心に毎年開催され、今回は第31回目の開催である。
私が参加したワークショップでは、「未成年者の胃がん予防 いつ、どのように行うか市民、行政の立場から」をテーマに進められ、若年層からのピロリ菌対策について、それぞれの演者から発表があり、その後参加者からの質疑を行った。演者の方々は、医師・医師会・行政担当・議員・我が子にピロリ菌が見つかった父兄・胃がんの罹患経験者・胃がんと戦った女性の遺したメッセージ等、多岐にわたり、それぞれの立場からの発表が行われた。
出席した方々は、このワークショップを通じて
 ・社会はまだピロリ菌感染の有無による胃がんリスクの違いが認識されていないこと。
 ・学校保健安全法ではピロリ菌検査の規定がないこと。
 ・将来にわたって胃がんリスクを軽減するためには、中学2年生での検査が有効であること。
 等が出席者に共有され、ワークショップ後「未成年者の胃がん予防」淡路コンセンサスとして発表された。
■淡路コンセンサスの骨子
 ①すべての中学生以上の未成年が平等にピロリ菌検査をできるようにする。
 ②感染があった場合、胃がん発症リスクを避けるための除菌治療ができる態勢を構築する。
 ③実現に向けて、自治体や政府へのはたらきかけを行っていく。
<所管>
 ピロリ菌検査を若年層からの検査として全国標準化することが将来の日本の胃がん撲滅に繋がることになる。その意味において、横須賀市の「がん克服条例」と中2におけるピロリ菌検査は医療関係者から注目され、スタディケースとされていることを実感した。
また、ピロリ菌に対して医療者ならびに市民の適切な理解が不可欠である。これは受検率に直接影響を与えるものであり、そのために様々な取り組みが行われている。相馬市では一般市民を対象とするアンケート調査を行い、ピロリ菌に対する理解度を明らかにすることを試みた。また、習志野市では中学生を対象にシンポジウムを行い、ピロリ菌に対する知識や検診の重要性などの広報活動を行っている。このような活動を通じて周知を図ることは本市においても有効と考える。
印象的だったのはビデオで出席された横須賀在住のお母さんの発表であった。その内容は4人家族の長男・次男が中2でピロリ菌検査を受検した際、次男のピロリ陽性が判明し、1次除菌で効果が出なかったため高校進学後に2次除菌を行い陰性となった。原因の一つとして「母子感染」の可能性から母親・父親の検査をしたところ、二人ともに陽性だったとのこと。ご本人曰く「知識が乏しく重要性に気づいていなかった」と語り、加害者的な心境に陥った様子だったことである。
こうしたことから、ピロリ菌検査についての広報活動及び周知を積極的に図ることは本市においても進めるべき課題と考える。
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