平成30年度 教育福祉常任委員会 他都市調査【一日目】

【一日目】10月23日(火)川崎市
「川崎市立東菅小学校の学力向上に向けた取り組み」

 平成32年度から実施される新学習指導要領のモデル校として、一足早く取り入れた「川崎市立東菅小学校」に授業改善の取り組みについて視察を行う。

新学習指導要領では、「生きる力」の育成に加えて思考力・判断力・表現力等の育成、豊かな心や健やかな体の育成が基本的な考え方となっている。そのような点において、同校がどのように先行して取り組んでいるのか興味深いところである。

同校は、川崎市多摩区に所在する創立48年の公立小学校である。生徒数は516名、15クラスとなっている。周囲は名産品である梨畑なども残る新興住宅地然とした環境の平均的な小学校という感じである。
   
 同校では、葉倉朋子校長の方針のもと、児童の思考力を高める必要性を考慮し、5年前から、日本体育大学の角屋重樹氏をアドバイザーに迎え、授業研究に取り組んできた。研究の過程では、子ども同士の学び合いが思考を深めることを実感し、子どもの主体性を引き出す指導を行っている。

 教師はアドバイスをする感じで大きな流れを作り、子ども主体で授業を進めていき、「思考力」「判断力」「表現力」を高めていくことを主体とする。このことは、新学習指導要領の目標とするところである。あくまでも自由な発言が大切にされる。そしてポイントや大切なところは立ち止まらせて、話し合いが進むように考えているのだそうだ。そうした結果、ベテラン教員も若手教員もベクトルをそろえた形で授業を進めることができるようになったとのことである。

 授業風景を視察した際、教室内の座席のレイアウトからも指導方法が異なることが窺えた。生徒同士が対面する形で各自の意見を述べ合いやすくする形をとっている。その中で教師は進行役でありアドバイザーでもある。そして、学習した内容は教室内に掲示されていた。これは既習を活かすことや関係付けに繋がる思考の術に通じるという思考力の取り組みである。こうした指導方法は、小学校低学年からもできるそうだ。

 このような取り組みのほか、子供たちに落語や能、狂言などの体験を通じて、本物に触れて感性を育むことも特徴的である。子どもが主体といっても、それは個のことではなく友達との協力が重要であり、そこでは他人との比較ではない今日の自分、明日の自分とに比較であるということが身につくように指導されている。

 こうした環境で学ぶことで、コミュニケーション能力や自己表現力が養われていくのだろう。新しい教育の形が見えたような気がした。

 しかし、一方で一人一人の個性の違いや性格の違いもあるわけで、その点についてどのように考えているのか。また、家庭との連携方法についての考え方、教師の負担の変化など、疑問も残った。そうした疑問について、今後、学んでいきたいとの思いである。