平成30年度 教育福祉常任委員会 他都市調査【三日目】

【三日目】10月25日(木)高浜市
「高浜市学習支援事業」

 高浜市は、名古屋市の南東に位置し、面積13.11㎢・人口約49,000人のコンパクトなまちである。三州瓦が高名なほか、トヨタ自動車系の企業が多く所在しその影響で、第2次産業就業の割合は51.8%と全国一といわれている。そのため、被保護世帯数も少なく、したがって保護率も4.16%(全国平均17.1%)と大変低い値となっている。

 そうした中、高浜市では、子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されることのないよう、また、「貧困の連鎖」を防止するため、平成27年から生活困窮家庭の子どもに対する学習等支援事業を実施した。

 本市においても、同様に生活困窮家庭、児童養護施設に入所する子どもへの学習等支援を行っているが、高浜市におけるそれとは違いがあることから、今回の視察に繋がったものと考える。

 高浜市の学習等支援事業の特色は、社会資源が充実していたことが背景にあり、そこをベースに制度が構築できたことではないだろうか。同市では、これまで市内の5つの小学校区に「まちづくり協議会」を置いて、介護予防の拠点として活かしてきた。そこは、「宅老所」としてデーサービスを行い、地域のボランティアが昼食づくりを実施していたことと、市として積極的にヘルパー養成に傾注してきたそうである。

 加えて、福祉サービスの主要な関係機関を三河高浜駅前の「いきいき広場」に集約し、市民ファーストの全世代・全対象のワンストップサービスの相談支援体制が整備されていることも重要な点といえる。

 高浜市の生活困窮者自立援事業は、①居住確保支援②就労支援③家計再建支援④子ども支援等がある。今回の視察テーマは子ども支援の中の子どもの学習支援事業である。

 同学習支援等事業の全体像は、小学校高学年から高等学校卒業まで、子どもの成長段階に即した切れ目のない貧困対策を実施する。高校生になった時には、ひとり親家庭の子どもの学習ボランティアとして活躍できるような出番を用意する。支援が必要な子どもを確実に支援につなげる観点から、子ども健全育成支援員を増員して、家庭訪問を強化する。食事の提供を推進するための基金の立ち上げや子ども貧困対策会議の開催など地域との連携を強化する。などとしている。

 同事業の対象は、高浜市に居住する生活困窮世帯に属する中学生・高校生その他支援が必要と認められる者とされ、毎週土曜日(夏休み中は週3回)に行われる。支援内容は①学習支援②イベントの実施③食事の提供である。

 こうした取り組みの結果、児童それぞれの学習習熟度に合わせた学習支援を通じて、学習意欲の維持、希望する進路への支援が可能となった。また、地域との触れ合いにより、社会や地域に対する理解の高まり、価値観や視野が広がるとの効果がみられる。子どもたちにとっては、多くの人に支えられる安心感や地域への愛着など、精神的な成長にも利する効果があると思われる。

 子どもの貧困や学習支援等の問題が、存在していることを知りつつも、どこかで、この問題が腫れもののようになってはいないだろうか。たとえば「子ども食堂」など、ピンポイント的な支援は行ってはいるが、広がらない現実を感じる。

 高浜市のようなこうした諸問題を体系的に捉えて、多角的に地域の支えに繋がる「モノ・人・カネ」の好バランスを保ちつつ、福祉と教育の連携をとることは素晴らしいことと感じた。しかし、ひとつ気になることは、子どもの貧困と家庭環境は密接な関係があることに対して、この部分での解決策を見出すことが困難ということである。この解決に向け、国もこの問題に対し、真剣に向き合うべきと考える。